ゼニゴケ
ゼニゴケ
■門:コケ植物門
■綱:苔(たい)類
■科:ゼニゴケ科
■属:ゼニゴケ属
「何だこれは?小さな傘状の植物は?」と思い何気なくマクロモードで撮影したこの物体。
実はこれ。人家周辺半日陰の土の上に最も普通に見られるゼニゴケのある器官です。

ゼニゴケは、日本においては北海道から九州まで全国に分布しており、ほぼ世界中にも分布を広げています。小さく緑色でグニャグニャした無数の平べったい葉が地に這うように広がった様は誰しも見たことがあると思います。茎と葉の区別が曖昧な、いわゆる葉状体が広がった姿です。
少々グロテスクな姿は、いささか人間には嫌われる存在でもあるようです。地に張り付いてなかなか除去も難しいようで・・・。
この写真は、そんないつも見慣れているゼニゴケとは大違い。傘の様なこれは何だろう?最初はこの物体が果たしてコケなのか何なのかさえ分からなかったのが正直なところでした・・・。
この物体の下には、写真でもお分かりの通り普段見慣れている枯れ果てた葉(葉状体)が有ったのでゼニゴケと予想はしましたが・・・。
実は、このゼニゴケは胞子で増えるタイプではなく精子と卵子が受精して増えるのです。ということは「雌雄異株」なのです。
精子や卵子をつくる器官を「器托」といいますが、春になると雌株の葉状体には「雌器托(しきたく)」を、雄株の葉状体には「雄器托(ゆうきたく)」を付けます。この写真は、散々調べてみた結果、まだ若い「雄器托」だったようです。

この表面からやがて生まれる精子が雨水に流されて移動し「雌器托」の裏側にある卵子に到達。受精が成立します。この一帯は雄株だった訳です。
葉状体の上には杯(盃)状の「無性芽器」ができ、その中から「無性芽」が形成され、無性的にも繁殖が可能です。繁殖方法を思う存分使った生き方をしているようです。
春といえどもまだまだ寒い時期です。そんな中でも、繁殖のためにこのコケは準備万端といったところでしょうか。
このゼニゴケに限らず、色々なコケについて真剣に調べようと思い、東海大学出版会発行の「フィールド図鑑コケ」を最近購入して準備万端。だったはずなのですが、この様な傘状のコケの写真が見当たらないのでした。これが果たしてコケなのか何なのかさえ分からなくなり混乱しました。
ヒントになったのは、この「雄器托」の下に枯れ果てたゼニゴケが有ったからです。このゼニゴケを元にネットで色々と調べてみると有ったのです。この様な若い「雄器托」の写真が・・・。フィールド図鑑にあったその「雄器托」の写真は、かなり成熟したものだったのが判明したのでした。
結局は普通に見られる様な、たかがゼニゴケだったのですが、コケの種類を同定するのがこんなに困難を極めるとは思ってもおりませんでした。ゼニコケといえども「葉状体」あり「雌器托」「雄器托」あり「無性芽器」ありと色々な器官がバラエティーに富んでいたことで悩まされる材料が多かったということしょうか。結局は単品だけ見てもなかなか分からないということでした。
観察力というか生物の生態を知るということは、こういったところから鍛えられるのでしょうね。「それを知ったからといって何の役に立つのか」と聞かれるような気がしますが・・・。
ミクロを知ればマクロが見えてくるはずです。それは大きな意味では生態系であり、はたまた地球へと繋がるものなのです!
ちょっと大げさかも知れませんが私はそう思います。
【記事参考文献】「フィールド図鑑コケ」発行所:東海大学出版会 解説・写真:井上 浩
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