我が家の正面にゴミ出し場が有る。毎日のようにカラスの鳴き声が目覚まし時計代わりである。日本全国何処にでも居て何気なく目にするカラスである。
私が幼少の頃、なんと屋外に小屋を造り、そこでカラスを飼っていた人が居た。巣から落ちてしまった幼鳥だったらしいのだが、カラスをマジマジと間近で見ることが出来たのはそれが最初だった。なんとも愛敬のある顔をしていたのが今でも思い出される。
この鳥。分類上はなんとスズメ目カラス科である。スズメと同じ分類なのだ!カラスといっても実は色々な種類が存在する。日本で見られる真っ黒なカラスにはハシボソガラス、ハシブトガラス、ワタリガラス、ミヤマガラスが居る。ハシボソガラスは開けた草原や里山に多い。ワタリガラスは最も大きく、主に北海道で生息し、大型ほ乳類の死体を主な餌としている。ミヤマガラスは主に九州の農耕地に越冬に来て、大きな群れを作る習性がある。嘴の基が白っぽいのが特徴だ。
しかし、街中で一般的に見られるのはハシブトガラスである。もともと高い木が生い茂った山や森、林に住む習性があるのだが、街には人間の出すゴミ、つまり餌が豊富なのだ。高い建物や構造物を木に見立てれば、何とも住み心地の良いところなのである。
ところで、奴らは一体全体こんな街中の何処を住処として生活しているのか?と不思議に思っていた。ゴミ置き場でしょっちゅう目にするが、果たして毎回同じ個体がやってくるのか?それとも色々な個体が入れ替わり立ち替わりやってくるのか?
実は、ほとんどの場合同じ個体である。奴らはちゃんと番(つがい)で縄張りを持ち、そのエリア内で餌を確保している。縄張りを持たないスズメのように色々なカラスが入れ替わり立ち替わり出現していると思ったら大間違いである。よく、テレビ等で東京都心のゴミに群れになって集っている映像は、ほとんどが縄張りがまだ一定しない巣立ち直後の幼鳥である。
縄張りを持つといっても、ねぐらは大まかに決まっており、大規模公園などの木が生い茂ったところに集まって寝るらしい。朝が来れば縄張りに飛び立つ。
普段は直接的に人間に対して危害を加えることは無い。ゴミ袋を食いちぎって中の物を散らかすことは度々あるが、奴らからしてみればそこに餌があるからであり、人間に危害を加えているとはちっとも思っていないのである。農作物に対してもそうである。
しかし、繁殖期になると個体差はあるものの、かなり人間に対しての威嚇が激しくなる。「カァ、カァ、カァ・・・」と連続的に鳴かれる。性格的に激しい個体は威嚇に留まらず攻撃してくることもある。これは、極近くに縄張りの中に巣を持っている可能性が大である。
関東地方での繁殖期は5月から6月が普通である。巣立ちは7月上旬だ。この期間の中で親鳥の警戒が最も最高潮になるのは、幼鳥の巣立ち間際から巣立った直後であると聞く。つまり、人間が攻撃される可能性があるのは5月から7月ということだ。
カラスはとても記憶力が良く、自分にとって「危険人物」との警戒範囲に入った人間を覚えるらしい。服を替えても威嚇してくるので顔を覚えるのだろうか?繁殖時期に威嚇してくるカラスをいじめるとしばらくの間つきまとわれることになるので、無視するのが一番である・・・。
ゴミ荒らし、農作物被害、人間への威嚇、攻撃となれば、これは人間にとってはやはり害鳥となってしまう。しかし、カラスだって生きるのに必死である。住処だった森や林を切り開かれてしまったのだから、街に住むしか無くなってしまった。生き方を変えてまで順応しようとするほど頭が良い鳥。それだけである。
カラスの行動は全て生きるためである。ときに、私だってむかつくこともあるのだが・・・・。
人間に勝手に害鳥のレッテルを貼られてしまったカラス。
頭が良い鳥の悲劇である。
記事参考文献:「カラスはなぜ東京が好きなのか」著者:松田道生 (株)平凡社
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