昆虫類は地球上で最も膨大な種類数を誇る動物群である。確認されていない種類も膨大にあると言われているが、その数は80万種類で、なんと全生物の8割を昆虫が占めているのだ。
地球上で同定されている生物群はこうである。
ほ乳類 :約4,500種
鳥類 :約9,000種
魚類 :約23,000種
無脊椎動物:約20,000種
昆虫 :約800,000種
他の追随を許さない圧倒的種数を誇るのである。これはあくまでも同定された種数であるから、推定では更に多くなり、未確認の新種を含めると、なんと1,000,000種にも及ぶと言われている。気の遠くなるような数値だ。
「昆虫」という言葉を英語で訳すと、正確には「昆虫綱」なので「インセクト」となる。その昆虫の機能を人間の生活に利用していこうという技術のことを「インセクトテクノロジー」(2008年現在:東京農業大学助教授の長島孝行氏が提唱)という。
最近よく使われる「バイオミメティクス」という言葉がある。これは、日本語で訳すと「生体模倣技術」といい、様々な生物の機能を新しい技術やもの造りに応用しようというものであるり、生物機能全体を示す言葉である。従って、昆虫に限定された「インセクトテクノロジー」は「バイオミメティクス」の一部であるといえる。
「インセクトテクノロジー」で真っ先に思い浮かべるのは古くから私達の生活を支えてきた「養蚕業」である。つまりシルクである。
蚕が糸を吐き、繭を作り、その糸を織って作られる織物が絹織物だ。日本には弥生時代中頃に伝わった技術である。京都の西陣や群馬の桐生が有名である。
ナイロンという繊維があるが、これは実はシルクを真似て作られた化学繊維である。しかし、通気性や吸湿性が劣るこの繊維を下着やTシャツなどのように素肌に着られるだろうか。女性のはくストッキングで精一杯だろう。シルクのナノレベルまで真似しようとしても、到底今の技術レベルでは追いつかないのが現状だ。
従って、膨大なエネルギーを使わずに、昆虫の機能をそのまま利用する技術が最も効率的といえる。
シルクの応用は織物だけに限ったことではなく様々な可能性が解ってきた。例えば「人工皮膚」「コンタクトレンズ」「美容液」などである。「生体親和性」「無味無臭」「形状変化」「紫外線遮蔽」「腐敗防止」に優れているのでその可能性はかなりの分野に応用できそうだ。
シルクは、シルク=蚕というイメージだが、他にも繭を作り出す昆虫は様々である。その数なんと100,000種以上といわれているのだから驚きである。
養蚕業以外の自然界でつくられる繭のことを「ワイルドシルク」といわれるか、これらの利用も現在様々な分野で研究が進められているようだ。
省エネや再生可能な資源を実現するには、大昔から地球上で繁栄し、今まで生き残ってきた昆虫の持つ無限の可能性をますます利用して行ければと思いませんか?!
そのためには、衰退し続けてきた養蚕業の再生と更なる研究成果を期待したいです。
記事参考文献:「蚊が脳梗塞を治す!昆虫能力の驚異」(講談社) 著者:長島孝行
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